子どもが生まれると、子育て環境や教育の面にも少なからず関心を持つようになりますよね。
テレビ番組や雑誌・本でも『早期教育』『知育』『〇〇式教育法』など…子どもの教育や育て方に関する情報が溢れています。
中には0歳から通える学習塾や通信教材、学習ドリルも存在します。
「小さいうちから勉強って本当に必要?」
「子どもの将来の為に、小学校に入る前に読み書きができた方がいいのかな?」
そんな疑問を持たれたことはありませんか?
この記事では、『幼児教育とは何か?』そして『幼児期に本当に必要な教育』についてお伝えします。
目次
幼児教育とは何か?
実は、『幼児教育』と一言に言っても、いくつかの種類に分かれます。
小学校就学前までの幼児期に行う様々な教育、その全てを総称した呼び方が『幼児教育』です。
生活するための知能や運動能力についての教育、読み書きや数字を勉強する学習、習い事など、種類は多岐にわたります。
対象になる年齢
生まれたての0歳児から、小学校入学前の6歳児までが対象です。
幼児教育の種類や教材によっては、その中で細かい対象年齢が設定されているものもあります。
『幼児教育』の種類と特徴
大まかに分けると以下の3種類があります。
- 生きる力を身につける『知育』
- 小学校の学習を先取りする『早期教育』
- スポーツや文化芸術活動などの能力を伸ばす『習い事』
どれもよく見かける言葉ですよね。
ですが、具体的にそれぞれの違いまではご存じない方も多いのではないでしょうか?
『知育』は、想像力・思考力・判断力など、人生の様々な場面で必要となる『自分で考え行動する力』を育てる教育です。
『知育』で養われた力は人生を通してとても重要なもので、就学後の学習能力にも大きく影響します。
保育園や幼稚園でも重要視されており、遊びや日常生活の中で子どもの能力を伸ばす教育です。
『早期教育』は、本来であれば小学校で勉強する文字の読み書きや数字の計算などを、学習ドリルや教材を使って先取り学習する教育です。
1970年ごろからブームになった『早期教育』ですが、近年ではそのデメリットを指摘する専門家が増えています。
方法を間違うと子どもの発達に悪影響となる可能性がある為、注意点の多い教育と言えます。
『習い事』は幼児向けのスポーツクラブやピアノ教室などが当てはまります。
こちらも『早期教育』ほどではないですが、良い面もある一方、方法によっては悪影響も指摘されている為、注意が必要です。
このように、『幼児教育』にも種類があり、それぞれが違う特徴を持っているのですね。
以下ではそれぞれのメリット・デメリットについて詳しくお伝えします。
種類別に解説:幼児教育のメリット・デメリット
『知育』『早期教育』『習い事』と大きく3種類に分けられる幼児教育ですが、それぞれにメリット・デメリットがあります。
種類別に詳しく紹介します。
生きる力を身につける『知育』
想像力・思考力・判断力など、『知育』で身につく能力は人生を通して重要になる、まさに『生きるための力』です。
豊かな想像力は相手への思いやりやアイディアを生み出す力に繋がりますし、思考力・判断力は、目の前で起こった事に対して適切に対応する力に繋がります。
特別な教材が必要なわけでもなく、日常の生活や遊びの中から、子ども自身が学び取っていくものです。
このようにメリットばかりの『知育』ですが、より効果的に行うために周りの大人たちが守るべきルールがいくつか存在します。
- 子どもに強要しない
- 一見変わった考えや行動を行っても受け入れる
- 子どもの意見を否定しない
- 大人は必要以上に手を出さず、口出しもしない
つまり、子どもに好きなようにさせる、ということです。
簡単そうに見えて、実際にやってみると、つい口を出してしまいそうになることもありますよね。
大人がどこまで大らかに、適切な対応ができるかが求められる教育でもあるのです。
人の迷惑になったり、危険が伴うことでなければ、大人が理解できない言動であっても否定してはいけませんし、「こうしなさい」と指示してもいけません。
子どもの興味が赴くままに、気が済むまでとことんさせることが、『知育』ではとても重要なのです。
デメリットまでは行きませんが、大人の忍耐力やルールへの理解が必要なことが、この教育の難しさでもあります。
読み書きなどを先取り学習する『早期教育』
文字の読み書きや簡単な計算など、小学校に入ってから勉強することを就学前に先取り学習するのが『早期教育』です。
小学校に入学した時点で、これから学校で勉強することが既にできている状態ですので、余裕をもって勉強に取り組むことができますね。
周りの子どもたちよりも勉強に余裕を持つことができ、本人の自信に繋がることも大きなメリットです。
文字の読み書きや簡単な計算は大人も教えやすく、子どもと一緒にドリルを解きながら教えてあげよう!と意気込むお父さん・お母さんもいらっしゃいます。
子どもの教育に熱心なご家庭なら、ごく当然のことだと思います。
ただ、『早期教育』についてはメリットよりもデメリットの方が大きいと、多くの専門家が指摘しています。
最大のデメリットは、先取り学習のためにドリルや教材に向き合っている時間です。
幼児期の一番望ましい過ごし方は、友達と一緒に思う存分遊ぶことだと言われています。
なぜなら、人生で一番脳が発達する幼児期に、自然環境の刺激や人とのコミュニケーションの中で得た様々な発見や体験が、知能や身体・精神面の発達に直結するからです。
幼児期の子どもは、遊びの中で自分がした行動に対して相手がどう反応するか、そのやり取りを通して成長していくのです。
文字の読み書きや計算の練習に多くの時間を使ってしまい、遊びの時間が削られてしまうのは、本来伸びるべき能力の発達を阻害してしまう可能性があります。
例えば、本当は外遊びの時に見かけるたくさんの植物に
「この葉っぱとあっちの葉っぱは、どうして形が違うんだろう?」
「この花とあっちの花は違う香りがする!」
と関心を持っていて、その疑問や感動を周りの友達や大人に話したいと思っているけれども、学習ドリルに向き合うことに時間を取られてしまって、次第に関心が薄れてしまう。
そういったことが起こってしまうのです。
本来伸ばすことが出来たはずの能力の成長を止めてしまうなんて、もったいないことだと思いませんか?
また、せっかく先取り学習で習得した学力も、長く続くわけではないようです。
小学校6年間で見た場合、『早期教育』を行った子どもとそうでない子ども、両方の学力に差は出ないという調査結果もあります。
『早期教育』については、下記でも詳しくご紹介します。
スポーツ系・文化系の能力を伸ばす『習い事』
子ども自身が楽しみながら取り組めている事であれば、メリットが大きな教育と言えます。
スポーツ系であれば身体能力や体力面だけでなく、精神面の成長にも繋がります。
文化・芸術系であれば、豊かな想像力や感受性を育てることができますね。
保育園・幼稚園とは別に、習い事を通して友達をつくることもでき、人間関係の幅が広がることもメリットではないでしょうか。
一方、大人が半強制的に始めさせた習い事の場合は注意が必要です。
子ども自身が『やらされている感』を持って、嫌々取り組んでいる習い事は、子どもの心身の発達に悪影響を及ぼします。
本当は他にやりたいことがあるけれども、大人が言うから我慢して行っている、という経験を積めば積むほど、子どもは受け身になっていきます。
強制的な習い事は、意思表示を諦める癖がついてしまったり、「自分の意見は尊重されない」と自信喪失に繋がる可能性があるのです。
習い事をさせる場合は、「子ども自身が楽しめているか?望んでいるか?」を意識し、大人だけの判断で強要はしないように注意しましょう。
ドリルや教材を使った『早期教育』ブームの裏側
そもそも『早期教育』はどのようなことがきっかけで注目されたのでしょうか?
1970年ごろ、ソニー創業者の一人である井深大氏の著書がきっかけとなり、ブームに火がついたと言われています。
当時はアメリカでも『早期教育』ブームが巻き起こったばかりで、日本もその流れに乗ったような形でスタートしたようです。
ただ、アメリカではすぐに専門家から批判的な意見が出て、検証が行われました。
その結果『早期教育』のデメリットが早くから指摘され、過度なブームも巻き起こりませんでした。
一方、日本では有名私立学校のお受験ブームが重なったこともあり、デメリットはあまり広まらずに『早期教育』ブームは更に加速していったのです。
ブームに則った学習ドリルや教材が次々と開発され、『早期教育』は企業の売上を支える一大マーケットとなりました。
そういった背景から、日本ではなかなかデメリットが注目されることがなく、近年になってやっと批判的な意見が目立つようになってきたのです。
つまり、子どもにとって重要だから続いてきたブームなのではなく、企業の販売戦略にとって重要だから続いてきたブームだったのですね。
実際に、多くの脳科学者や小児科医、大学教授が、「早期教育は意味がない」ということを訴えています。
慶応義塾大学医学部教授の高橋孝雄氏は、教育記事の取材で以下のように答えています。
早期に質の高い教育を施すことが子どもの運命を左右すると考えている親御さんは多いものですが、基本的にはそうではないと思います。
(引用:AERAdot.『「早期教育は意味がない」慶応大学医学部教授が指摘、その理由とは』)
教授によると、子どもの得意科目や身体能力は、遺伝子によってある程度決められているとのこと。
「将来は〇〇の仕事に就いてほしい」
そういった大人の一方的な希望で、子どもの興味や能力を矯正してしまうことは、子どもが生まれ持った才能を潰してしまうことにもなるのです。
勉強することを子ども自身が楽しみ、自分から望んで行っている場合は別です。
しかし、そうでない場合は、一度しっかり子どもと向き合ってみてください。
「子どもが今一番やりたいことは何か?」
「自分が果たせなかった夢を子どもに押し付けていないか?」
子どもの将来に大きな影響を及ぼすことですので、よくよく考えてみてくださいね。
幼児期に本当に必要な教育とは?
0歳から6歳までの間は、人生で最も脳が大きく発達する時期です。
ぜひ、学習ドリルや教材ではなく、生身の人間や自然環境にたくさん触れさせてあげてください。
人とのコミュニケーションや、自然環境から受ける刺激は、子どもの好奇心をそそります。
子どもが「どうして?」という素朴な疑問を持つことで、それを追求していく探求心や想像力、思考力が鍛えられるのです。
「脳が発達するんだから、勉強もした方がいいんじゃないの?」
そう感じる方もいらっしゃるかもしれませんね。
学習能力の土台にもなる『知育・徳育・体育』という言葉をご存知でしょうか?
(画像引用:文部科学省『学習指導要領「生きる力」』)
こちらは文部科学省、『学習指導要領』についてのWEBページに掲載されている図です。
黄色の丸が『知育』、赤い丸が『徳育』、青い丸が『体育』を表しており、三育と呼ばれることもあります。
ちなみに、前述でもご紹介した幼児教育の一種『知育』は、この三育をまとめたものとして使われることが多いです。
学校の授業内容の構成や進め方を決める時に基準にするものが『学習指導要領』ですが、学習能力を高めるために、まずは三育を育てましょう、と明言しています。
自ら考える力、豊かな人間性、丈夫な身体、この3つが揃うことが、十分な学習に必要不可欠ということです。
一番脳が発達する幼児期は、遊びや生活の中で様々な体験をさせることで、自ら考えて試行錯誤する経験をたくさん積ませてあげましょう。
まとめ
- 幼児教育には大きく分けて3つの種類がある。
- 『知育』『早期教育』『習い事』それぞれにメリット・デメリットがある。
- 『早期教育』についてはデメリットの方が大きいと指摘されている。
- 『早期教育』における最大のデメリット子どもが生まれ持つ才能や能力を潰してしまう可能性もある。
- 幼児期に本当にすべき教育は、生きる力を育てる『知育』である。
「子どもの将来のために親が何をしてあげられるか?」は子育ての最大の悩みでもありますよね。
一歩やり方を間違えると、子どもの才能を潰してしまうことにもなりかねません。
子どもが一番何を望んでいるのか、しっかりと向き合って、適切な教育を受けさせてあげたいですね。
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