皆さんは「不登校」と聞くと、どのような原因をメージしますか?
ニュースなどでも取り扱われる問題なだけに、不登校になる原因は「いじめ」が多いのだと思われてる方も少なくないと思います。
ですが、何も不登校になる原因は「いじめ」だけではありません。
今回は、子どもが不登校になってしまった場合に、親である私たちが「子どもの為にできること」をご紹介していきます。
目次
不登校になる原因は?
冒頭でお伝えした通り、ニュースなどでも取り上げられることなどから「いじめ」を連想する方が多いのではないでしょうか。
実際の「不登校になる原因」にはどのようなものがあるのか、確認してみましょう。
参照元:不登校サポートナビ
参照元データ:文部科学省:平成24年度「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」
上記の表は、不登校のきっかけになったことをまとめたものです。
この結果を見ると、不登校になってしまう原因になるのはいじめだけではないことが解りますね。
表に合わせて、3種類の原因に分けて見ていきます。
学校に関わる原因について
「いじめ」が多いように思われがちですが、一番多いとされているのは「友人関係」であるとされています。
特に、小・中学生の場合は
「他者の意見を受け入れられない」
「(相手に対して)尊重出来ない・尊重してもらえない」
「価値観の違い」
などの、自分と違う考えを持った友人などと衝突した際に、ぶつかる事が出来ずに身を引いてしまうことが不登校に繋がる場合があります。
また、意見をぶつけあえたとして、どうしても折り合いをつけることが出来なかったりすると、口調が荒くなったり、暴力的な行動をとったりしてしまうようになり、いじめに発展してしまう可能性も否定できません。
「学業の不振」や、「入学・進級時等の不適応」「進路にかかる不安」に関しては、学校内に限ったことではなく、家庭内でのプレッシャーが関わっている場合も考えられます。
「教職員との関係」「学校のきまり等をめぐる問題」と「部活動等への不適応」は、教職員との関係が悪化した結果、部活動等への不適応に繋がってしまったり、学校のきまり等をめぐる問題から教職員との関係が悪化してしまったりと、連鎖してしまう可能性があります。
「学校に関わる原因」としてご紹介しましたが、それらのきっかけを作ってしまう火種は学校の中だけではないということになります。
家庭に関わる原因について
家庭に関することで不登校になってしまうとは、どういうことなのでしょうか。
上記の表を確認してみると
- 親子関係
- 家庭の生活環境の急激な変化
- 家庭内の不和
これら3点であり、この3点はどれも「子どもだけが原因」というわけではありません。
友達や教師のように、相手となる家族が居ることできっかけを作ってしまう場合があるんですね。
本人に関わる原因について
不登校のきっかけの中で多くの割合を占める「無気力」と「不安など情緒的混乱」が目につくのではないでしょうか。
不登校になってしまう原因は、ここまで様々にご紹介してきましたが、やはり一番多いのは、不登校になってしまう「本人」がきっかけを作ってしまうことなんですね。
「病気による欠席」に関しては、本人の意思が関係していることではない場合があるので、ここでは省略します。
「あそび・非行」と「意図的な拒否」に関しては、家庭に関する原因であったり、友達関係に繋がる部分もあるため、一概に本人だけが原因とは言えないようにも思えます。
ですが、やはり「無気力」「不安など情緒的混乱」に関しては、本人の気持ちの面が大きいのではないでしょうか。
ここまで、表に合わせて3種類の原因に分けてご説明してきましたが、これらを見ると不登校になるきっかけは学校だけにあるわけではなく、日々の生活の中や精神的な面が大きく関わっている場合もあることが分かりました。
では、このように様々なきっかけから、我が子が不登校になってしまった場合、私たちは子どもに対して、どのようなことがしてあげられるのでしょう?
親だからこそ出来ること
子どもの居場所を守れるのは
皆さんは、上記のような不登校になる原因を目にし、どのようなことを考えましたか?
「うちの子に限って…」
「意思が弱いんじゃない?」
「親が気付かないなんてありえない!」
このように考えた方もいらっしゃるかもしれません。
ですが、大人と違って子どもは身体的な面だけでなく、精神面に関しても大人に比べてまだまだ成長途中であることを忘れてはいけません。
そして何より、本来であれば子どもにとって一番の味方になるべき親が子どもを追い込んでしまっては解決出来ない問題に発展してしまうことを心に留めておかなければなりません。
「うちの子に限って…」
「意思が弱いんじゃない?」
このような考えを親が持っていると子どもが理解していた場合、悩みを打ち明けてくれると思いますか?
「親が気付かないなんてありえない!」
家庭内で、子どもが話しやすい環境を作ってあげられていますか?
子どもの為に出来ることを考えるのであれば、「ここに居て良いんだよ」と子どもの居場所を守ってあげることが大切ですよ。
まずは焦らず、見守って
何より、正しく理解して頂きたいことは「見守ること」と「放置すること」は、まったく違うということです。
言葉として見れば、まったくの別物であることは言うまでもありませんが、実際、どのような違いがあるのか説明することは出来ますか?
言葉の捉え方は、個人によって違いますが「見守る」ことは、相手の想いや行動などを知った上で力を貸さないこと。
「放置」は、言葉のまま、相手に対して無関心な様を指すのではないでしょうか。
親である私たちは「見守ること」はあれど、「放置すること」はあってはならないことです。
親だからこそ出来ることは、親でなければ出来ないこととも言えます。
もし、子どもが不登校になってしまった場合、子どものありのままを受け止めてあげることは、親でなければ出来ないことです。
不登校になってしまったことを受け入れ、子どものありのままを受け止めてあげること。
そして、時に見守ることこそが不登校を脱する為に必要な第一歩ではないでしょうか。
何よりも優先するべきこと
我が子が休んでいる間にも、学校の授業は進んでいきますし、集団生活だからこそ学べることや、体を動かすことも不登校になってしまっては身につきません。
「このまま、この生活が続いてしまったら…?」
「勉強についていけなくなる前に学校に行かせないといけないんじゃ…。」
もちろん、不安になることは次から次へと出てくるでしょう。
ただでさえ、不登校という状態に陥ってしまっては、我が子のことが分からなくなり、子どもとの距離を感じることもあるかもしれません。
ですが、何より優先するべきことは「子どものケア」だと思いませんか?
理由が解っている場合であれば、不登校を乗り越えるまでにかかる時間は短いかもしれませんが、子ども自身「なぜ」「どうして」「こうしたい」「こうなりたい」という気持ちが定まっていないこともあります。
ある日突然、不登校になってしまった理由が判明することもあれば、時間が経つにつれ、心の整理がつき、理由を話してくれることや、いきなり「学校に行く!」と立ち直る場合もありますよ。
親だからこそ出来ないこと
では、逆に親だからこそ出来ないことには、どのようなことがあるのでしょうか。
例えば、一緒に学校で勉強することや、同じ空間で習い事を受けることは一般的に出来ることではありませんよね。
また、思春期の子どもの気持ちは、親では中々わかってあげられないことも多いものです。
親には話せないことも、友達や心を許せる周りの大人になら話せることがあったりします。
親だからこそ出来ないことは、親だけでは出来ないこととも言えます。
子どもを想うあまり、なんでもしてあげたくなることも出てくるかもしれませんが、そんな時こそ、周りに協力してもらうようにしましょう。
先を急ぐあまり、子どもの現状を真正面から受け止めてあげられなくなってしまっては、振り出しに戻ってしまう場合もあります。
こちらの記事では、私たち親がしてあげられる事の他に、お子さんが安心できる居場所と題し、焦点をあてています。
勉強面のサポートや、親同士の交流の場についても触れられていますので、併せてご覧頂くことをオススメします。
周りを頼ることや、意見を求めることは決して親として恥ずべき行為ではありませんよ。
不安になることも、焦ることも、あって当然のことです。
すべてを家庭内だけで解決しなければならないことではありません。
子どもの為を思うなら、是非、周りに目を向けることを忘れないでくださいね。
不登校を乗り切るまで
「いつも」と違う…変化があれば目を光らせて
中学2年生の6月、それも終わりかけのことでした。
「お母さん、ちょっと頭痛い。」
結衣は小さい頃から活発な子どもで、小学校入学をきっかけにバスケのチームに入るくらい体を動かすのが好きな子でした。
あまり風邪や腹痛といった体の不調を訴えることもなかったので、朝起きてくるなり告げられた言葉に驚いたのをよく覚えています。
「熱測ってみる?」
と体温計を差し出す私に
「んー…風邪、とかではないと思うんだけど…」
と、どうにも歯切れの悪い結衣の言葉に首を傾げつつ、熱を測るように促しました。
結果、熱はなかったので胸をなで下ろしたのですが、結衣の表情は曇ったまま。
我が家は共働きで、残念ながら私の方が結衣よりも先に家を出ます。刻一刻とその時間が迫るなか
「とりあえず、痛み止め飲んで学校に行ったらどう?」
と頭痛薬を渡す私に
「…そうだね、そうする。」
と言いつつも曇った顔のまま動かない結衣。
いつもとどこか違う結衣の様子は気になったものの、中学生になったことで体質も変化していく部分があるのだろうと深くは考えていなかったんです。
いつもより遅いペースで朝食を口に運ぶ姿を見て、休ませるべきかとも考えましたが、口には出しませんでした。
もし、あまりにも体調が優れなければ、学校内であっても自分から言うだろう。
そう結論付け、私は仕事の準備をし
「行って来るね」
と、結衣に声を掛けました。
いつもなら大きな声で返してくれる
「行ってらっしゃい」
が聞こえてきませんでした。
(登校するまで見守った方が良いかな?)
と不安がよぎりましたが、朝一で片付けなければいけない仕事があったため、後ろ髪を引かれつつもそのまま仕事に出掛けたのです。
9時を少し過ぎた頃、私宛に学校から連絡が。
(やっぱり休ませるべきだったのかも…)
そう思いながら、私が口を開くより先に告げられた先生からの言葉に心臓が止まるくらいの衝撃を受けました。
「結衣さんが学校に来ていません。ご自宅にも連絡させて頂いたのですが、誰も出なかったのでこちらに掛けさせて頂いたのですが…。」
それを聞いて頭の中は真っ白になりました。
もしかしたら、頭痛は何か大きな病気の兆候だったのかもしれない。
今まで結衣は頭が痛いなんて言った事なんかなかった。
朝の様子もおかしかったではないか。
それなのに、どうして私は深く考えることもせず、娘一人を残してきてしまったのだろう。
「すぐ自宅に戻って確認します!」
そう言って電話を切ると同時に上司に事情を説明し、すぐさま家へと帰りました。
結衣が倒れてしまっていたらどうしよう。
自分の勝手な基準で娘の不調を軽んじてしまったことに対する申し訳無さや、母親としての不甲斐なさを感じながら震える手で鍵を開けました。
眼の前に飛び込んで来た結衣の靴を見て、居ても立っても居られず半ば叫びながらリビングに向かいました。
そこに結衣の姿はなく、どうして良いか解らなくなってしまった私はその場に膝をつき、視界が真っ暗になっていくのを感じました。
その時背後から小さく「お母さん?」と呼ぶ声がして、目を見開いて振り向きました。
そこには、朝見た時のまま、制服を着た結衣が驚いた表情で立っていました。
不安に押し潰されそうだった私はもつれそうになる足で駆け寄り、ただ黙ってしがみ付くように結衣を抱き締めました。
「お母さん、なんで…?」
仕事中のはずの私が、いきなり家に帰ってきたため結衣はビックリして固まっていました。
「学校から結衣が学校に来てないって連絡が…それで家で倒れてるんじゃないかって心配で…そうだ!頭痛は?酷くなってない?」
矢継ぎ早に質問する私に、結衣は
「…頭痛は、痛み止めも効いてきたみたいだから…大丈夫だよ。」
それを聞いてほっとしました。
「そう…ごめんね、学校に行けないくらい痛みが酷かったのに気付いてあげられなくて…」
頭痛は治まってきたものの、ずっと痛みが続いていたせいか、気分が優れないという結衣の言葉を聞いてから学校に今日は休ませる旨を伝えました。
この日を境に、張り詰めていたものが切れてしまったかのように、結衣は学校に行くことをしなくなりました。
親として、人として
結衣が学校を休むようになって一週間が経ち、カレンダーは7月へと変わりました。
朝になると、結衣は決まって「頭が痛い」と言うようになりました。
しかし、病院へ行こうと言っても
「寝てれば治るから」
と、病院へは行こうとはしませんでした。
本当に頭痛が酷いなら検査をしないと。
なのに、病院へ行かないなんておかしい。
他に何か原因があるのでは?
今までこんな事のなかった娘の変化にモヤモヤは募るばかりでした。
結果として休むことになってしまった一週間の間も、
「なぜ学校を休みたいのか」
という理由を教えてほしくて、様々に問い掛けてみましたが、結衣は押し黙ったままでした。
気が付けば私の質問攻めを避けるために、食事すら自分の部屋で取るようになってしまいました。
理由が解らない。
共働きという環境の中で、結衣にはたくさんの我慢をさせてきてしまったというのは理解していたつもりです。
ですが、あくまでも「つもり」でしかなかったことに、このような事態になってしまったことで、やっと気付きました。
「結衣は良い子だから大丈夫。」
「もう中学生だから。」
「干渉し過ぎたら、親離れ出来なくなってしまうかも…。」
冷静に考えてみれば、どれも私自身の、親のエゴに過ぎなかったと思います。
それらしい理由を並べて、子どもの為だからと。
本当は自分の為であって、結衣のことを解ってあげようとはしていなかったのだと。
本当に結衣の為になることは何だろう?
まずは、私自身が変わる必要があるんじゃないか?
主人と話し合い、担任の先生とも話し合い、後日、学校で活動されているカウンセラーの方に、家まで訪問して頂くことになりました。
結衣の学校には、いじめや不登校、心の悩みといった様々な問題や相談に対し、話を聞いてくれるカウンセラーの方が居ます。
本来は匿名性があり、よほどの急を要する場合以外は、担任の先生や保護者にも、その内容が明かされることはありません。
「明後日、カウンセラーの先生に来てもらうことになったから…。」
扉越しに声を掛けましたが、結衣からの反応はありませんでした。
もしかして、会うことすら拒否されるのではないだろうか。
そんな不安を抱えながら、先生の訪問を待ちました。
「今日はよろしくお願い致します。」
恥ずかしながら、急な仕事が入ってしまったことで入学式にすら顔を出すことが出来なかった私は、見たことのなかったカウンセラーの先生を女性の方だと思っていたのですが、予想に反し、随分と若い男性の登場に呆然としてしまいました。
髪も茶色く、少し長めに揃えられ、Tシャツにカーゴパンツという、パッと見ただけではとても先生とは思えない風貌に、思わず
「本当に大丈夫なんだろうか?」
と怪訝そうな顔で、私は先生を見ていたと思います。
先生はそれを気に止めることもなく
「結衣さんのお部屋はどちらになりますか?」
と聞いてきました。
ちょっと面食らいつつも
「こちらです…あの、カウンセリングの間、何か私に出来ることは…?」
と恐る恐る聞いてみましたが、先生は一言
「理由を詮索せず、まずは、ゆっくりと休養をとらせてあげて下さい。ここからは、僕の仕事なので。」
そう言うとカウンセラーの先生は控えめに、小さく扉をノックしました。
「結衣ちゃん、起きてる?」
私と話していた時とは違い、とてもフランクな言葉遣い。
先生なのに、そんな話し方で良いの?と思っていた矢先、扉越しに聞こえた結衣の声に驚きました。
「…先生、本当に来たの?」
久し振りに聞いた、どこか楽しそうな結衣の声に涙が溢れそうになりました。
「ご飯とかちゃんと食べてる?ちょっとで良いから、話そう?結衣ちゃんの部屋で良いかな?それともリビングの方が良いかな?」
と、先生は結衣に問いかけました。
すると、程なくして結衣は、自分から先生を部屋に招き入れたのです!
私がどんなに頑張っても出来なかったことを、この先生はたった一言で成し遂げてしまえるんだ。
その事実は、とても高いところから突き落とされたような、そんな衝撃でした。
やっぱり私は、母親失格なのかもしれない。
一人残された私は、そんな気持ちのまま、何をするわけでもなくリビングで一人。
少しでも事態が好転することを祈っていました。
小さな一歩を、一緒に
時折、結衣の部屋から聞こえてくる笑い声。
もう何年もあの子の笑い声を聞いていなかったように感じましたし、実際のところ、とても久し振りだったと思います。
一時間ほど経過したところで、
「じゃあ、また来るね。」
と、先生の声が廊下から聞こえ、結衣との話が済んだことを理解しました。
私はどんな話をしたのか、少しでも早く聞きたくて先生の元に駆け寄りました。
しかし、先生は
「結論から申し上げると、私から彼女が何故不登校になってしまったのか、をお伝えすることは出来ません。」
と言うではありませんか。
リビングで詳細に話してもらえると思っていただけに、先生の言葉に私はただ目を見開くことしか出来ませんでした。
ですがその後にビックリするような事を言われたのです。
「というのも、結衣さん自身が直接ご両親に話したいと考えているからです。」
考えてもいなかったその言葉に
「…結衣が…ですか?」
と、にわかに信じられない私の口から出た言葉は震えていました。
「確かに、私は結衣さん本人から何故不登校になってしまったのか、という理由を直接聞きました。」
「その上で、結衣さんに私からご両親に話そうか?と話したところ、いつか自分の口から伝えたい、と話してくれました。」
結衣が私や主人に話してくれなかったのは、もしかして不登校になってしまった原因は、本当は私達、親にあるんじゃないか。
私達が解ってあげられなかっただけで、本当はずっと結衣からのサインを見逃してしまっていたんじゃないか。
思えば、結衣が不登校になってしまってから、そんな風にばかり考えてしまい、自然と理由ばかりを問い掛けていたように思いました。
早く元に戻って、と焦ってしまったことで、逆に私の方が余裕をなくしてしまい、結衣の考えや意思を尊重出来ていなかったんです。
だからこそ、結衣は今話すべきではない、と口を閉ざしてしまったのではないだろうか。
そう考えれば、どこか自然とこれまでの結衣の行動や言動に納得が行く部分があることに気付きました。
「先程もお伝えしましたが、まずはゆっくりと休養をとらせてあげて下さいね。」
「この休養をとる、ということはご両親にも言えることですよ。」
それを聞いて、心身ともに見えない何かに縛られていた感覚がふと、解き放たれるのを感じました。
言葉にするなら、「憑き物が取れた」という表現が一番当てはまるのではないかと思います。
見えない何かとは
勉強についていけなくなってしまう…。
周りに置いていかれてしまう…。
ずっとこのままだったらどうなってしまうんだろう…。
娘の気持ちが解らない…。
マイナスな感情が先走って固定観念でがんじがらめになっていたのです。
焦ってばかりで、周りばかりに目を向けてしまっていたせいで、心の余裕なんてものもありませんでした。
私が焦れば焦るほど、結衣が話そうとする決意や覚悟を鈍らせてしまい、今のような事態を招いてしまったのだと思いました。
もちろん、本人の心の問題も少なからずあったと思いますが、子どもを支えてあげるべき母親が不安を顔に貼り付けていては、話すことなんて出来ませんよね。
私が結衣に見せるべき母親の姿は
「何があっても大丈夫!」
と、安心させてあげることだったんです。
その日の夜、扉越しに結衣に私の決意を話しました。
「お母さん、結衣の気持ちを全然わかってなかったね。一人で先走ってごめんね。もう大丈夫だから。」
「だから、一緒に乗り越えていこうね。」
次の日から、私がしたことは結衣の為に、まずは勉強の遅れを取り返すことでした。
不登校から脱したとしても、中には勉強についていくことが出来なくなったことにショックや強烈な不安感を覚え、再度不登校になってしまう場合もあるとカウンセラーの先生に教えてもらったからです。
幸い、私の職場に大学生の娘さんを持つ方が居て、結衣とも面識があり、家庭教師をお願いする事が出来ました。
担任の先生にお願いし、学校で配られた宿題などのプリント類を一週間に一度、私が学校まで取りに行き、授業に遅れないよう家庭学習を続けました。
またそれに併せて、二週間から三週間に一度のペースでカウンセリングの先生との時間も作るようにしました。
こうした私の提案に、結衣は文句の一つも言うことなく、取り組んでくれました。
真剣に考え、真正面からぶつかることが我が家では正解だったと思います。
原因判明、私が出来ること
「お母さん、あのね」
クリスマス目前の、とても寒い日でした。
部屋に閉じこもる事はなくなり、勉強する場合もリビングに出てくるようになった結衣でしたが、一向に理由を話してくれる素振りはこれまでありませんでした。
それでも、いつか自分で話したい、と自ら伝えてくれていた結衣の言葉を信じ、私自身が出来ることをこれまで続けていました。
結衣の言葉が、どこか硬いように感じ、その表情から何を話そうとしているのかはすぐに解りました。
そして、そんな結衣が
「女らしくないって…ゴリラみたいだって、言われてたの。」
不登校になった原因を呟いたのです。
「そんなことで?」と一瞬思いましたが、ふと自分が同じ年頃だったら?と考えました。
思春期の女の子にとって、容姿や体型といった内容は些細な事も凄く気になるものです。
女性らしさといった抽象的な発言であっても、ゴリラみたいなんて言葉と一緒に言われたら、悩んでしまうのは当然のことです。
何より、結衣は体を動かすことが好きな子で、小学校一年生の頃からバスケのクラブチームに所属していました。
中学にあがった際に、勉強が解らなくなると嫌だから、と結衣の判断でやめたのですが、ここまでに、真剣にバスケに向き合っていた分、普通の女の子に比べると、腕や足にはしっかりと筋肉がついています。
どういった理由で、そんな事を言われてしまうようになったのかは、結衣自身も解っていなかったようですが、私に話すことが出来なかった理由は理解出来ました。
親の気持ちとして、子どもをけなされるような言葉を言われるのは誰だって嫌ですよね。
そんな言葉を言われた、という事実を伝えられたなら…普通の親なら、居ても立っても居られなくなり、場合によっては、
「そんなひどい事を言うのは誰!?」
と、それこそ躍起になって子どもに詰め寄るかもしれません。
だけど、結衣はそれを望んではいなかったんです。
だからこそ、私が学校にいけない結衣の全てを受け入れること。
そして、その気持ちが十二分に伝わったことで、今の私であれば、受け止めてくれると判断してくれたのだと。
もちろん、内心では思うところも沢山ありました。
ですが、今、結衣が私に望んでいることは、そんな風に言っていた相手をどうにかしてほしい、という事ではないことは解りきっています。
これからどうしていくべきかということに、親としての手助けを求めている。
そう思った私は
「…結衣は、どうしたい?」
と、勇気を出して原因を話してくれた結衣に聞きました。
結衣は
「今の状態で、学校に行きたい…とは思えないかな。」
と答えました。
外見や身体的な特徴といった目に見える部分は、なかなか変わることはありません。
少なからず、結衣自身も、言われた言葉に対してトラウマのように感じてしまっている部分があり、そう簡単に取り除けることではないと思いました。
私は、どう返事をしようか思考を巡らせました。
そんな事言わないで、一度行ってみたら?
それじゃ、これからもずっと休み続けるつもりなの?
馬鹿なこと言ってないで、ちゃんと学校に行きなさい。
どれも、結衣の為ではない言葉だと思いました。
私が結衣に掛けられる言葉は一つしかないと思いました。そこで
「じゃあ、行っても良いかな?って思えたら…その時にまた、考えてみたらどう?」
とだけ話しました。
何故なら結衣の考えを尊重し、その上で協力することが出来る答えはこれしかない。
また学校に行こう、学校に行きたいと考えた時に、それが実現出来るような足場を作らなければ。
と私は考えたのです。
支えることは、何も表に立つことだけではなく、元の場所に戻れるようしっかりとした基礎を作っておくこと。
それに向かって結衣が自身で考えて進む事が、結衣にとっての成長のチャンスでもあるとも思いました。
私の言葉は、結衣にとって予想していたものとは違ったのでしょう。
目を丸くさせ、大きくぽかんと開けた口はなかなかに印象的で、いまも鮮明に思い出せます。
この日から、以前のように、結衣が大きな声で笑うようになってくれました。
これによって私の中で、結衣の為になることをしてあげられたという自信にも繋がったと、今でも思っています。
最後の一歩を踏み出すのは、子ども自身
「そろそろ学校、行かなくちゃだよね」
と結衣が言い出したのは中学3年の夏、結衣が不登校になって、丁度1年が経過した頃でした。
私に対して発した言葉ではなく、ただ自然とそう呟いたのです。
考えたままが言葉になったような、無意識のうちの発言だったように思います。
後々になって、カウンセラーの先生に伺ったところ、家庭内での環境を結衣に合わせたことが良かったのではないかと教えて下さいました。
残念ながら、我が子が「不登校になってしまった」という事実を受け入れることが出来ない親御さんもいらっしゃるそうです。
原因を聞くこともしないまま、ただ
「学校に行きなさい!」
と言われることは、子どもにとっては恐怖でしかありません。
しかも、子どもが安心出来る場所であるべき「家」という居場所を奪うことにもなってしまいます。
「休みグセがついてしまう」
「ただの気の持ちようなだけ」
「周りの目が気になる」
本当に子どもの為になること、を考えたとき、辛い思いをさせてまで学校に行かせることが、本当に正しいのでしょうか。
不登校になったからといって、勉強が何も出来なくなりますか?
体を動かすことが出来なくなりますか?
今は、不登校になってしまった子どもの為に、様々な支援活動を行って下さっている場所もあります。
結衣の場合、学校側がたくさんの支援をして下さり、担任以外の先生方や、カウンセラーの先生とも連携をとることが出来たというのも不登校を脱するチャンスや、それに付随する機会を多く与えてくれたからこそと思っています。
これらは子どもだけでは解決出来る問題ではありません。
親である私たちが手を差し伸べてあげること。
これが何よりも大切なことであり、子どもの意見を尊重してあげることは、親だからこそ出来ることだったと思います。
結衣は、夏休み明けの2学期から、それこそ何事もなかったかのように学校に行くようになりました。
ゆっくりと時間かけ、自分の中での答えを導き出せたのだと思います。
また、家庭教師の先生に見ていただきなから、学校で出されたテストなどを中心に自宅学習を続けていたため、授業に付いていけないということもありませんでした。
そして今は、結衣自身が志望していた高校へ進学することも出来ました。
不登校は甘えではない
1年という、普通に生活をしていれば早いとさえ感じる期間も、不登校になってしまった結衣を通じて見た1年は、私にとってもかけがえのないものになりました。
身体だけでなく、精神的にも大人になっていく思春期は、不安定になるのが当たり前なのかもしれません。
そんな中で、悩み、苦しんで、どうしようもなくなってしまい、殻に閉じこもってしまいたくなった時。
ゆっくりと時間を掛けて解決することこそ、必要だと思いませんか?
つい、親の気持ちが先立ってしまい、見逃しがちな子どもの想い。
我が子が苦しんでいたり、困ったときこそ子どもの気持ちに寄り添って話を聞いてあげることが、一番だと、不登校を克服した現在は思うのです。
まとめ
我が子が不登校になってしまったなら…親である私たちが支えてあげることが一番です。
その為に、きちんと原因から考えていくことが一番です。
不登校になる原因として考えられるものは、
- 学校に関わるもの
- 家庭に関わるもの
- 本人に関わるもの
があり、不登校=いじめが原因とは言い切れません。
子どもの居場所を守ることが出来るのは、親である私達だからこそ出来ることです。
不登校になってしまった場合、どうしても勉強面や精神面など、子どもの将来を思って不安になってしまうことが多々ありますが、焦らず、見守ることも必要なことです。
この時、何よりも優先するべきは「子どものケア」であることを忘れないで下さいね。
すべてを家庭内だけで解決させる必要はありません。
子どもの為に必要であるなら、周りに目を向けることも解決の糸口になりますよ。
「いつも」と違う…そんな変化があったなら目を光らせてみて下さい。
親として、人として、大切なことは「本当に子どもの為なのか」という部分です。
子どもと同じ目線に立ってみることも、自分自身の行いや言動といったものを振り返り、見直してみることも大切ですよ。
最後の一歩を踏み出すのは、子ども自身です。
子ども自身、十人十色です。
一人ひとりにあったペースで進むことが一番ですよ。
そして何より、不登校は甘えではありません。
不登校、という事態に陥るまで、必ず子ども自身、葛藤があるはずです。
だからこそ、ゆっくりと時間を掛けて解決することこそ、必要なことではないでしょうか。
子どもを真正面から受け止めてあげることが出来るのは、親以外には務めることのできない仕事とも言えます。
不登校を乗り越えた先の子どもの将来の為にも、たくさんの選択肢を広げてあげられる親で居たいですね。
中学生はとにかく多感な時期になりますよね。
中には「友達から仲間外しにされている。」と考え込むこともあるかもしれません。
さらに反抗期とも重なりますので、周りの大人や学校の先生と対立することもあります。
対立のあまり
「もう学校には行かない!」
とそれ以降学校行かなくなる人も中にはいるかもしれません。
しかし、学校行かなくて不登校になっても勉強さえできてたら今の時代高校には行けますよ。
昔と比べまして不登校の生徒に対する配慮はかなり進んでおりますので、定期テストの時に登校して成績が良ければ高校へは行けます。
この記事では初めは些細なことで担任との対立が始まり、反抗期の抵抗として不登校になった女子生徒が、家庭教師によって学力を復活させて高校合格した話になります。
不登校になっても成績さえ良ければ高校には行けます。
この記事を読んでいただき、沙耶みたいに立ち直ってくださいね。
実際、子どもが不登校になってしまった場合、家庭内でどのように接したら良いのだろう…?
子どもにどんな声を掛けてあげたら良いの?
学校に説明するべき?
これからを考えるあまり、支えてあげなければならない私たちが不安になってしまうことだってありますよね。
私も仲良くさせてもらっている、友人の姉は、21歳で結婚し、翌年には女の子を授かりました。
結衣(仮名)と名付けられた彼女は、とても活発な子で、私も彼女が小さい頃には遊び相手をしたこともありました。
そんな彼女が中学に入り、不登校になってしまったと聞いた時は、思わず耳を疑ったのを覚えています。
ですが、高校生になった今、彼女は不登校を乗り越え、笑顔で学校生活を送っています。
不登校になってしまってから、どのような事があったのか。
また、いかにして不登校を乗り越えることが出来たのか。
その一部始終を語ってもらいました。
不登校のきっかけは、本当に些細なことから始まるのかもしれません。